沼地。

sznt.exblog.jp

『Happy Birthday』

遅れましたが唯お誕生日おめでとう!!!

和ちゃん視点の唯和SS。
唯のお誕生日を祝うのは今年で最後です。今まで見てくださりありがとうございました。








一日目。
早くも誓いは破られる。
通学中に名前を呼ばれたのち背後からしっかりと抱き付かれる。呼ばれたときにまさかとは思ったが、そのまさかが起こるなんて、まあ予想通りだった。さすがの本人も抱き付いた瞬間に気付いたらしく、気まずそうに離れていく。

「抱き付きたくなる背中をしている和ちゃんも悪い!」

自分の行動をごまかすためとはいえ、とても理不尽な言い分を浴びせられる。私は無言で再び学校を目指した。慌てて追いかけ、軽いノリであやまってくる唯。私も軽いノリで怒ったフリをしただけなので、話題はすぐに別の何かへと移り変わる。

その後も休み時間、体育の授業中、お昼休み等々、随所に誓いは破られる。
初日だからこんなものだろう、とフォローはしたものの本人は納得していない様子で地団駄を踏み悔しさを表していた。私はそれを見守りながら、確かに唯は昔から人に触れるのが好きだった。と、今まで意識したことのなかった当たり前の事実を意識した。その内唯は、軽音部の面々に力尽くで連れて行かれ、一日目が終わった。


二日目。
誓いはある程度守られる。
昨日の教訓を生かして、私に近付かないよう努めていたのが功を奏する。

「だから和ちゃんも私に近付かないで!」

昨日よりはマシとはいえ、それなりに理不尽な言い分を浴びせられる。席が前後な時点で不可能に近いと反論しそうになったが、こうなると唯は頑固なので受け流す。それにしても、そこまでする必要はあるのだろうか。浮かんだ疑問も飲み込んで、二日目が終わった。


三日目。
三日坊主の予想は外れてしまった。どうやら唯は本気だった。
その昔、日記をつけ始めたときにはちょうど三日間だったのに。それと同列に語るのは違う、と怒られそうなほど私に触れてはくれなかった。代わりに唯の隣である姫子に被害が及んでいるのは巻き込んで申し訳ないとあやまるべきだろうか。この分だと梓ちゃんにも過剰にスキンシップをとっているはず。唯が公に私のせいにしたら対応しよう。とりあえずそこまでする必要があるのは理解した。理解したところで大した協力も出来ないのが厄介。長丁場を覚悟して、三日目が終わった。


七日目。
今日で一週間。早いのか遅いのかわからない時間の流れだった。
ここまで長く触れられないのは初めての出来事で、唯も未だに慣れないのか「腕を組むのだけはセーフにしない?」と提案をされる。そもそも誓いを立てたのは唯だけであるから、私は好きにすればいいという放任主義なのだけれど。そんなときに「最後までもたない方にゴールデンチョコパン十個分賭ける!」と、律が言い放ったものだから、唯はヤケになって新ルールを諦めたところで、七日目が終わった。


十五日目。
「やーーーっと半分かあ! ほんっっっとに長くツラい戦いだよ!」
「何と戦っているのよ」
「正直、ここまで続くとは思ってなかったでしょ?」
「正直、そうね」
「ふふん。私はやるときはやるのです!」
「律にも負けれられないしね」
「あー、それはそうだけどー、でもー、それよりー、ね?」
「はいはい」
「……ねえ、半分まで頑張ったご褒美が欲しいな」
「ご褒美? ケーキとか?」
「和ちゃんから抱き付いてくれるとか?」
「私から抱き付いたら誓いは破られることにならないって?」
「さすが和ちゃん! 鋭い!」
「体が触れ合った時点で変わらない気がするのよね」
「体が触れ合う、って言い方なんかエロい~……あ、すみません嘘です」
「はあ、まったく」
両手を少し広げたら、条件反射なのか唯は一目散に飛び込んできて顔を合わせて笑った。久し振りのぬくもりを感じながら、十五日目が終わった。


二十九日目。
いよいよ最終日。振り返ればあっという間だけれど、一ヵ月間という日付のまとまりは私にとっても長くツラい戦いなのかもしれなかった。
慣れない日々の中で自覚した、いや、させられたことは明日伝えれば喜んでくれるだろうか。その前に、明日の唯はどのような有り様になるのか想像の範疇を超えそうで想像がつかない。何せ、普段なら普通に存在したものが一ヵ月も機能していなかったのだから、近いイメージとしては長い間留守だった主人と再会をした飼い犬。あるいは、戸惑いのあまり逆に離れたままかもしれない。そうなったときこそ、こちらから抱き付くべきかもしれない。しかし、私に上手く出来るだろうか……
考えても仕方ない。とにかく、明日は唯の誕生日だから悪い方へは行かないだろう。プレゼントは他にいらないと言われたけれど、やっぱり形として残るプレゼントも用意した。ほぼ負けが確定している律はどんな顔をするだろう。姫子は、やっと解放されるって安堵するかな。そして、唯は?
皆とおしゃべりをしている休み時間、ふと目が合った唯と私。自分にしか向けられていない微笑みに何故だか鼓動が速まって、二十九日目が終わった。


三十日前。
「う~、最近和ちゃん不足だあ~」
「じゃあ、今、唯のベッドで一緒に寝転んで腕にしがみつかれてる状況は何?」
「そうだけどそうじゃないんだよ~、三年生って離れること多いよね~」
「席、前後じゃない」
「そうだけどそうじゃないんだよ~、わっかんないかなあ?」
「残念ながら」
「よし、決めた! 今年の誕生日プレゼントは和ちゃんに思いっきり甘える!」
「え?」
「そのために明日から和ちゃんにくっつくのやめる! 抱き付くのも腕を組むのもほっぺにちゅーも! ここに誓います!」
「ほっぺのそれは、そんなにしてないでしょう……」
「ちゃんと我慢するから、ちゃんと甘えさせてね! ね? 他にプレゼントはいらないから!」
「唯がそれで納得するなら」
「やったー! よーし、頑張るぞー、えいえいおー!」
「私の腕まで上げなくても」
「そして、和ちゃんも気付くといいよ」
「ん、なんて言った?」
「えーとね、これはとんでもなくハッピーなバースデーになるよ、って言った!」
[PR]
by cyawasawa | 2016-11-28 02:47 | けいおん!! SS(8)

百合と舞-HiMEとけいおん!!とアイマスと艦これと制服女子高生と一緒に歩んで生きたいブログ。


by cyawasawa