沼地。

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『つれづれうつつ』

静留お誕生日おめでとう!!!!!!!!!!!

あまりめでたくない静なつSSですが、ひっさびっさの三人称です。
ひっさびっさのあまり書き終えた今も書き方わかりません。








「―――では、好きな言葉は?」
「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」
「また渋いですね。好きな理由を伺っても?」
「なんとなく、やね」
「会長自身が歌のような恋をしていらっしゃる可能性はありますか?」

静留は湯飲みに視線を移し、お茶を一口運んだ。
生徒会長に当選して初めての仕事は、新聞部による取材だった。プロフィール、インタビュー、グラビア写真で構成される号外は初等部と中等部にも配布され〝学生による学生のための学園の自治〟を教育方針として掲げる風華学園にふさわしい試みは、教員たちにも評判だ。立ち上がったのは数年前だが、アイドルのような扱いを受ける生徒会の人望とそれに辞さない実力も手伝って今や一部では伝統行事と呼ばれるまでに浸透している。
「可能性ゆうか死を受け入れるほどの忍ぶ恋、なんて壮絶過ぎて誰でも興味持ちますやろ?」
「はあ、なるほど。もし会長さんからそこまで想われたら相手は幸せでしょうね」
「重いだけや思いますけど……あ、ダジャレみたいになってしもた」
「ハハハッ。では最後に、意気込みをお願いします」


「パソコン借りるぞ」
ノックもせず、生徒会室のドアを開けるなりなつきは告げた。
「急になんやの、ビックリするわあ」
「すまん。確定的な情報を手に入れたんだ」
「そら勢いもつくわけやね。どうぞどうぞ、そのためのココやさかい」
「すまん」
会長専用の椅子を譲ると静留は部屋の隅でお茶の準備に取り掛かる。手軽なインスタントではなく茶葉と急須を使うのが彼女のこだわりらしく、なんとも楽しそうに微笑んでいる。来客用に湯飲みはいくつか常備されているが、なつきが訪れた際には決まって藍色の水玉模様が選ばれていた。
「今日のお茶菓子は春らしく三色団子どすえ。良かったら食べてな」
「ありがとう」
それだけ交わすと二人の間には室内が夕焼け色に染まるまで会話は一言も生まれなかった。


「ダメか……」
ため息と共になつきはか細く吐いた。ノックもせず入ってきた頃の勢いはすっかり失われている。手応えの無さをごまかすためか、はたまた一段落ついた証か、そこで初めて三色団子の一色目を口にするのだった。
「おいしい?」
長机にて雑務に励んでいた静留は手を止め声を掛ける。桜から新緑へ移り変わる音すら聞こえてきそうな静寂はみるみる活気付いていく。
「……少し、かたいな」
眉をしかめて話すので静留は軽く笑った後、何も言わずに食べる様子を眺めていた。その穏やかな笑顔は友人として見守る配慮に見えるし、向こうの出方を待ち続けている焦りにも見えた。
「そういえば拝見させてもらったぞ」
「へえ、何を?」
予想外の切り出しに戸惑ったのか少し声が上ずった静留は、なつきにしては珍しい〝拝見〟という言葉使いにも目を丸くしたようだった。
「号外だよ号外。スゴいな、まるで芸能人だ」
「あら、なつきがあないに俗っぽいのん読まはるやなんて珍しい」
「俗っぽいってお前生徒会長が……まあ私も日暮から受け取るまで知らなかったが」
「ちゃあんと学校来なあかんよ」
「中等部の頃に比べて全然来てる。問題無い」
「そういうことにしときましょ」
「おい」
「はい?」
「まったく……ああ、そういえば好きな言葉だっけか。舞衣たちが騒いでいたぞ」
「へえ、何を?」
このとき、静留の安定した口元は変化を露わにしたが、二本目も平らげ冷めきったお茶を味わうなつきは一切気付かず話は続く。
「会長さん自身が歌のような恋をしているのかも~?、って。それとなく訊き出すように頼まれてしまった」
「もう一週間も前やしなんのことやら忘れてしまいました」
「そういうことにしとこうか……ってなるか! 自分の好きな言葉は簡単に忘れんだろう」
「なつきは、どう思わはりました?」
「え?」
「まずはなつきの意見を聞きたいわ」
「そう言われても、何せ一週間も前だし忘れたな。歌はもちろん第一印象も」
「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」
「それだ! よくスラスラ出てくるな、って好きなんだから当たり前か。あー、第一印象は百人一首にあった気がする、かな?」
「訳は知ったはる?」
「サボリ魔の私でも古文の成績は悪くないぞ」
「自分でサボリ魔て認めはったね」
「おい」
「はい?」
「まったく……で、なんだ、訳について私の意見を述べればいいのか」
「そやね」
「〝わからん〟だな。恋だの愛だの興味も無いし構ってもいられない私には何もかもがわからん」
「えぇ~……」
「なんだその落胆っぷりは」
「よぉ~く考えてそれなん?」
「考えるも何も、考える必要が無いというか、」
「わかりました」
パシッ、と両手を合わせた静留は決して怒っているわけではなく、何かひらめいた故の仕切り直しだということは、なつきの何か察した故の浮かない表情からも明らかだった。
「堪忍え、なつき。うち、誕生日プレゼントのお返しいらんゆうたけど撤回します。今から一週間後、なつきがじっくり考えはった末の意見を聞きたい」
両手を合わせたままの静留は正に懇願するポーズそのものだった。本人がそこまで狙ったかわかりかねるが真剣な物言いも加わって、
「お返しがそんなのでいいのか……?」
効果はあったようだ。
「充分どす。よろしくお願いします」
「まったく。お前の考えもよくわからん」
なつきは呆れた様子でいたが、短い付き合いながらも静留はそういう人間とだけ理解はあるのか、お茶を飲み干し、大人しく立ち上がるのみだった。
「よう言われます」
合わせていた両手は組まれ、満面の笑顔で見送る静留になつきはやっぱり呆れ混じりの笑みを大人しく返すのみだった。
「じゃあな、また来る。ごちそうさま」
「いつでもどうぞ~」
来た際とは違って平穏に閉められた扉、速くも遅くもない単調な足音、二人だった空間の面影が消え去ると静寂は舞い戻る。
一人になった静留は空になった湯飲みとお皿を一瞥すると、
「アホか、うちは」
と、声を発さずに呟いた。

取材を受けた一週間前。静留は思い出す。何故口走ってしまったのか。好きな言葉なんて、インタビューなんて、適当に対応しとけばいいものを何故後先も考えずに自分は。

「どこかで気付いてもらいたい欲が存在するからや」

今度は声を発して呟いた。
そうすることで自身を戒め言い聞かせているような力強さだった。傍に居れるだけでいい、ほんのわずかでも支えになれればそれで、と誓いを立てたにも関わらず抑えきれなかった欲の醜さ。決して公にしてはいけない想いのもどかしさ。そして、なつきに期待を抱いてしまった愚かさ。生徒会長に立候補したあの日に絶ったものが、今こうして最愛の人を蝕ばんでいる。
静留はブレザーのポケットから携帯を取り出し、発信履歴を開いた。一番上に表記された〝玖我なつき〟の文字を見据える瞳は冷ややかで、普段本人に向けるそれとは同じに見えなかった。


「さて、一週間経ったわけだが」
ノックもせず、生徒会室のドアを開けるなりなつきは告げた。
「急になんやの、ビックリするわあ」
「お前が意見を聞かせろと言ったんだろうが」
なつきは腕を組みながら、いつもと変わらず生徒会長として佇む静留へ歩み寄って行く。
「せやからお断りさせてもろたやないの」
「まあ、聞け。すぐ済む」
なおも腕を組みながらなつきは続けた。その真っ直ぐな眼差しに静留の瞳は再び柔らかみを見せたが、すぐに陰りを灯したのは同じ過ちを繰り返さないためだろうか、話を聞く覚悟とは別の決意が滲み出た面持ちをしている。

「一週間。私なりに考えてみたが、やはり答えは〝わからん〟だ。しかし、もし静留が同じ境遇の恋をしているのなら……私は応援するし、死なせもしない」

沈黙。
いつもとは勝手が違う間の訪れは、なつきを居たたまれなくさせるには申し分なかったようで「それだけだ、じゃあな」とぶっきらぼうに背中を向けて去って行く。心なしか頬が赤らんでいたのは我に返ったのか、恥ずかしさによるものか、こんなはずじゃなかったのか、そんな曖昧な様子を目の当たりにして静留は、

「なつき! ありがとう!」

と、声を張るのが精一杯だった。
そうして返ってきたのはいつもの呆れ顔で、静留がなつきをからかう際にもよく見られる馴染みのやり取りはお互いを安堵させた。

扉は閉まり、なつきの気配が放課後特有の賑わいに混ざったことを確信すると静留はため息を漏らした。
自然に綻ぶ口元からも喜んでいるのは確かだったが、浸る間もなく中断していた生徒会の雑務に手を付けていく。それは生徒会長としての責任を果たすというより、喜びを上回る脅威から逃げ出しているような必死さがあった。

「一週間。私なりに考えてみたが、やはり答えは〝わからん〟だ。しかし、もし静留が同じ境遇の恋をしているのなら……私は応援するし、死なせもしない」

なつきの考えは、友人・藤乃静留としてならこれ以上にない答えだろう。
だから、静留は改めて思い知らされたのかもしれなかった。この気持ちとは長い付き合いになることを。自分となつきの間には何も起こらないということを。それがなつきにとって最善だということを―――。
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by cyawasawa | 2015-12-19 00:00 | HiME SS(14)

百合と舞-HiMEとけいおん!!とアイマスと艦これと制服女子高生と一緒に歩んで生きたいブログ。コス写専用アカ→@cyawa_cossya


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