沼地。

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『君といる』

唯お誕生日おめでとう!!!

おめでとうSSは今週中に追記します。
11/30 17:37追記! 和ちゃん視点の唯和SS!








「たのもーっ!!」
突然、わざとじゃないかと疑うぐらいの激しさで扉が開かれ、突然、唯が現れた。
私は条件反射に肩が揺れたが、長らく一人、物静かな生徒会室にて作業を進めてきた集中力を意識して平静さを取り戻す。普段ならまだ軽音部で活動しているはずなのに、一体何をしに来たのやら。

「和ちゃんを手伝いに来ました!」

訊く寸前に答えが出て、そこで初めて唯が居る方を振り向くと、両手を腰に当て得意気な顔をしている。生徒会の仕事に触れることは過去に一度もなかったのに今さら手伝うだなんて、おそらくこれは冗談だろう。
「なあ~んてねっ! もうすぐ私の誕生、」
「そうなんだ。じゃあ、この書類を日付が古い順に並べてくれる?」
「えっ?」
「よろしくね」
驚かされた仕返しというわけではないけれど、ここは敢えて合わせてみた。計五十ページに渡る書類を笑顔で差し出すと、唯はきょとんと言葉を失っていてしばしの沈黙が流れる。同調、否定、対抗。さて、どんな反応を示すのか。

「超オッケー! 任せて!」

待ち時間に該当しないわずかな時間が過ぎた頃、唯は素直に書類を手にして私の隣に腰掛けた。
結果は〝同調〟だったけど、一見やる気に満ち溢れている表情にはどこか後悔も混じっていた。次は〝否定〟になるかしら。無理をさせたことに対して若干の後ろめたさに襲われる。とはいえ、少しでも仕事量を減らしてくれるのはありがたい。引き続き自分の作業に取り掛かる。

隣ではパラパラと書類をめくる音、ブツブツと日付を読み上げる声が聞こえた。単純だけど忍耐が問われる作業って唯じゃなくても堪えるわよね。そろそろ爆発するかもしれない。

「って、ちっがーう! 私は書類整理をするために桜高に入学したんじゃなーいっ!」

なんだか話が壮大になっているけれど、案の定〝否定〟が始まった。
数ページ分は処理されたであろう書類はひとまとめにされ、あっという間に机の端へと強制移動。続いてパイプ椅子をこちらに向けて体ごと急接近。ふくれっ面になっているのは予想通りだけれど、眉が下がり気味なのは何故だろう。

「手伝いじゃないのは最初からわかってたわよ。で、なんの用?」
私は視線を資料に戻し、同時進行で効率化を図ろうとする。
「ふふ、腕を上げたね和ちゃん……私のノリツッコミはどうだった?」
「そんな愉快な行動をしたとは思えない顔をしているけど」
「私って、つくづく顔に出ちゃう系女子なんだよね~」
「わざわざ系統を分ける必要はあるのかしら」
「あのさ、もうすぐ私の誕生日じゃない?」
「そうね」
「だからさ、プレッシャーをかけにきたの」
「プレッシャーって?」
「私ももう十八になっちゃいますし……和ちゃんはどんな特別なプレゼントをくれるのかなあって。ねえ、十八歳って大人への第二歩だよね!」
「第一歩はいつ起きたの」
「十六だよ! 結婚できるから!」
「ああ、なるほど。十八歳になれば車の免許が取れたりするものね」
「そして、第三歩はハタチ!」
「保護者の承諾がいらなくなるものね」
「お酒が飲めるからだよ!」
「大学でも音楽続けるんでしょ? 禁酒した方がいいんじゃない」
「ちょっとぐらいなら大丈夫だよ、ね?」
「喉を気遣って飲まないプロミュージシャンは一定数存在するわよ」
「そ、そっか……う~ん、でもいつか和ちゃんと飲み会をして酔った姿を見てみたいぃい」
「プレッシャーはどこに行ったの?」
「ハッ、そうだった! 私も十八歳になるしさあ、そろそろ進んでもいいと思うんだよ」
「何? 進路?」
「進路はとっくに決まったよ! だからさあ、もう十八歳だし、大人だし……ね?」
資料を押さえていただけの左手が急に唯の両手で包まれた。

「一緒に大人になろうよ、和ちゃん」

瞬間、先程とは比べものにならない驚きが胸を襲う。
唯の言葉が示す意味、左手に留まる熱、あと一行で資料の書き写しが終わる気掛かり、私の心音―――。整合性のない思考が次々と頭に渦巻いて、体は強張ったように動かない。
「ねえ、こっち向いて?」
言われるがままに恐る恐る振り向いた。両手をぎゅっと握られたからだ。なるべく動揺を隠したつもりだけれど、上手くごまかせたかはわからない。まさかここにきて〝対抗〟……なんて、的外れな意見は唯と目が合ってすぐに消えた。

違う。
泣きそうな顔をしていたんじゃない。
潤んだ瞳、赤らんだ頬、願いを込めた下がり気味の眉。
私にしか見せてくれない顔をしていたんだ。

そう気付いた頃には唯しか視界に入らないほどまでに、私たちはすぐ傍に居た。
何か発しようにも手遅れで、過去にもここまで近くに感じたことは一度もない。せいぜいその場の勢いに任せて頬にされたときが限界で、それ以上はお互い躊躇と手探りの繰り返しだった。私たちはすぐ傍に居ながら、遥か遠くに独り居た。でも、これからは。

あ、瞼を閉じた。
唇が触れる寸前、唯がそうしたので私は自分もそうすべきなのかとか眼鏡は邪魔にならないかしらとか色んな反応が一気に押し寄せた。まあそんな雑念もあと数ミリで塞がれてしまうのだけれど……握ったままのシャープペンシルに自然と力が入る。そんな自分を認めたくないのかぼんやりと、昔、唯から理想のファーストキスについて語られたことを思い出した。あの頃はまだ小学生で、少女漫画も顔負けの夢物語に私も一緒になって心躍ったりはしたのよね。唯は覚えているだろうか。どうでもいいか、そんなこと。だってほらもう、唇は当たって……

「おーい、そろそろ帰れよー」

突然、わざとじゃないかと疑うぐらいのタイミングで扉をノックされた。
「のおおおうっ?! ビックリしたあっ!!?」
幸いにも扉は開かれなかったが、唯はパイプ椅子がひっくり返るぐらいに慌ただしく立ち上がるし私はそのリアクションにビックリした挙げ句シャープペンシルの芯を折るしで〝はじめの第二歩〟は散々な結果になってしまった。この行き場のない感情をどうしてくれよう。
「な、なあ~んてねっ! 冗談だよ冗談! プレッシャーとか嘘、嘘! 放課後和ちゃんと居たかっただけっ!」
唯はパイプ椅子を元の位置に戻しながら早口で放った。全体的に真っ赤な顔になっているのは言うまでもない。
「はあ……いくら恥ずかしいからってそのごまかし方はないでしょう」
「ちょっと!? ハッキリ言わないでよもうっ! 和ちゃんは恥ずかしくないの!?」
「私って、つくづく周りが賑やかだと冷静になっちゃう系女子なのよね」
「何それ聞いたことない。わざわざ系統を分ける必要はあるの?」
「ないわ」
二人で笑い出したのは言うまでもない。
見回りの先生に邪魔をされるだなんて、それこそ少女漫画みたいだ。私たちは起こった事の顛末を振り返りながらしばらく笑いに耽った。こんなに笑ったのは、唯の進路希望調査票を確認したとき以来かも。

「はー、笑った笑った。ねえ、もう帰る?」
窓の色はすっかり黒くなっていた。
「そうねぇ、これを書き写してからにするわ。あと一行だし」
「じゃあ待ってるね!」
鼻歌と共に唯はコートを羽織り、鞄とギー太を抱えて帰る態勢を整えた。なんの歌か知らないけれど、こういう何気ない時間が心地良いのは出会った頃から変わらない。
ふと、今年の誕生日は私たち二人だけで祝おうかと提案が浮かんだ。毎年、憂との三人でお祝いをするのが決まっているけれど、それとは別に、二人きりで。
唯は喜んでくれるだろうか?
あと一文字、写し終えたら伝えてみよう。一緒に居たい気持ちは、もちろん私にだってあるのだから。
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by cyawasawa | 2014-11-27 00:00 | けいおん!! SS(8)

百合と舞-HiMEとけいおん!!とアイマスと艦これと制服女子高生と一緒に歩んで生きたいブログ。


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