沼地。

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『そうすることの難しさとか』

唯お誕生日おめでとう!!!!!


※おめでとうSSは近日中に追記致します※
11/29 3:38追記! 唯視点の唯和SS!








「早いわね、唯。おはよう」
「ふーん、だ」
って、言い返す代わりに私は腕を組んでほっぺたを膨らませてそっぽを向いた。
「「まだ怒ってるの?」」
すぐに和ちゃんと姫子ちゃんの重なった声が聞こえてきたけれど絶対に返事なんてしてやるものか。
机に頬杖をついて窓から見える景色に集中する。それであきらめたのか和ちゃんはそのまま姫子ちゃんとおしゃべりを始めちゃった。
いいなあ私も混ざりたい……じゃなくって、相手になんのダメージもあたえていない事実にもっと腹を立てなくちゃ。そう、私はこんなにも怒っているんだよ和ちゃん。こんなこと初めてなんだよ和ちゃん。それがどんなに重要な出来事かわかってるの!?

「アハハ! ちょっと姫子、それはどうかと思うわよ」
「ああ、やっぱり? あたしもそう思ってたんだ」

……全然わかってないですね。
なにさ、楽しそうに声まで上げて笑っちゃって。まるで私が無駄な抵抗をしてるみたいじゃん。うう~、でもそろそろ和ちゃんとしゃべ……いやいや、ダメだダメだこんな弱気なことでは! だって、まだ一日もたってないんだから! 本気を見せなきゃ!

「おーっす、和に姫子ー」
「おはよう」
「おはよ」

りっちゃんたちがやって来た。皆でにぎやかに挨拶を交わしているよ。いつもなら私もその中にいるのになあ……
「おっす、唯。窓なんか見ちゃって何たそがれてんだ?」
「おはよう、りっちゃん。外はヒドい雨だね」
「いや、とっても快晴だが」
「まるで私の心を表しているようだよ」
「えーっと? え? どういうこと、澪さん?」
「私にふるなよ……なあ、ムギさん?」
「え!? あ、あのー……唯ちゃん、もしかしてまだ怒っているの?」
私は振り向いてこくん、とうなずいた。
「マジかよ、唯」
「やっぱりか」
「あまり無理はしない方が」
「止めないで、ムギちゃん! これだけはゆずれないんだよ! これを成し遂げるためなら私はどんな試練にだって耐えてみせるよ!」
「その割にはまいってるオーラ全開じゃねーか」
「ふっ、気のせいだよ、りっちゃん。さっきのは新しい歌詞候補を言ってみただけだよ」
「なんかもうむちゃくちゃだな」
「和だって悪気はなかったんだからさ」
「そうそう、たまたま忘れてしまっただけで和ちゃんにとって唯ちゃんは大切な存在には違いないわ。唯ちゃんだってわかっているでしょう?」
「それだよ。悪気がないから、大切な存在だから、たちが悪いの」
私が軽くため息をついたところで朝一番のチャイムが鳴る。
「ダメだこりゃ。お前も一度決めたら頑固だからな~。ま、ほどほどにな」
りっちゃんは手をひらひらさせて自分の席へと戻って行った。
「ちゃんと話し合うべきじゃないか? 最近特に忙しかったみたいだし」
「我慢も度を超えれば体にも心にも毒よ、唯ちゃん」
続いて二人も去って行った。

皆は勘違いをしているよ。怒っている理由は誕生日を忘れられたからじゃない。私ってそんなに子供っぽくみえるかなあ? でも、これは二人の問題だからわざわざ説明する気はないけども。
なんとなくもう一回窓に顔を向けた。りっちゃんの言った通り、おひさまは立派に輝いている。
「……さん。平沢さん! わかりましたか!?」
「へ? 何が?」
条件反射で名前を呼ばれた方向を向くと、いつの間にか呆れ顔のさわちゃんが教壇に立っていた。
「窓ばっか眺めてないで先生が話しているときはこっちを見なさい。今日のホームルームは連絡事項が多いのよ」
「いやあ、天気が良くてついおひさまの光に誘われ」
「変な言い訳しない!」
「はい、ごめんなさいさわちゃん先生」
教室内に何人かの笑い声が響いた。りっちゃんと目が合うと、さっきのヒドい雨はどこいったんだよ!、と言いたげなジェスチャーをされる。私はあっかんべーをして対抗した。


何度も和ちゃんにしゃべりかけそうになったけど何度も乗り越えてなんとかお昼になった。案外いけるものだなあ、と感心していたら和ちゃんはお弁当を持って教室から出て行ってしまった。生徒会の用事がない限りはいつも皆で食べていたからこの時間が一番の気掛かりだったのに悩み損で終わったみたい。
ただ、用事なのか、私が口をきかないからなのか、両方なのか、出て行った正しい原因はわからない。
「てっきり、うっかり話しかけて元鞘に戻るかと予想してたけど長持ちしてんなあ」
「頑固、だからね私は」
「う~ん……澪、いつまで続くか賭けでもすっか?」
「お前は最低か」
「冗談だよ、冗談」
「ねえ、早く食べようよ」
私は会話を遮るように鞄からお弁当箱を取り出した。
「今日のおかずは何かな~?」
憂の笑顔を思い浮かべながら蓋を開けるとそこには好きなおかずがズラッと……ん? 何かがおかしい。ズラッと並び過ぎている。というか、全部が私の大好物だ。毎日栄養バランスを考えて作ってくれている憂からするとこんなラインナップはありえない。ありえるとしたら学校行事やピクニックみたいな特別な日ぐらいだよ。と、いうことは……
卵焼きを一口食べてみる。
ほどよく出汁が効いた塩味。適度な弾力。ご飯が欲しくなるおいしさ……
やっぱりそうだ。和ちゃんの味付けだ。何年も食べている私の大好きな味だ。いつの間に作ったんだろう。そして、いつの間に憂と手を組んだんだろう。
「どうしたの、唯ちゃん」
蓋を閉めて、お弁当箱を手に持って、椅子から立ち上がって、
「また、飛び出すんじゃねーだろな」
返事もせずに私は教室から飛び出した。背後からりっちゃんたちの慌てた声が聞こえてきてもおかまいなしに。


生徒会室の扉にこっそり耳をあてると、誰かと話している気配は少しも感じられない。電気は点いているし、自由に行き来出来る権限を持つ生徒会長である和ちゃんは間違いなくここにいる。それもたった一人で。
つまり〝私が口をきかないから〟が出て行った正しい原因になるわけだ。
改めて自覚すると自分がとてつもなくイヤな奴でとんでもないことをしでかしたような重みのある衝撃に襲われる。さっきまでの勢いはどこへやら、今はコワい気持ちでいっぱいだ。どうしよう。このまま教室に戻ってしまおうかな。やっぱり私はまだまだ子供……

ガチャリ。

「ひぃ!?」
動かずにいたら、いきなり扉が動き出した。目の前の人物か開かれた扉かどっちに驚いたのか、とりあえず変な声をあげた恥だけよくわかった。
「曇りガラスに影がチラチラうつってたわよ」
「あ、あー、そう……」
情けなさと照れくささと後ろめたさと数時間振りに口をきいた和ちゃんへの想いが一気にやってきて心臓がめちゃくちゃうるさくなっている。
「入ったら?」
「……」
早くいつもの調子を取り戻さなきゃ。扉が閉まる前に。和ちゃんが座る前に。和ちゃんが私を見る前に。和ちゃんが私と目を合わす前に。
「あ、あれであやまったつもりなの?」
やっと発せた言葉は言い方も含めて新しいケンカを生み出しそうなものだった。
「気に入らなかった?」
「違う、そうじゃなくて……!」
「違う? 何が?」
「……」

昨日からこの瞬間まで起きている私の和ちゃんに対する態度とか。
昨日からこの瞬間まで抱いている厄介な感情とか。
多分、そういうの全部が。

バレないように深呼吸をして一人座っている和ちゃんに近付き目を合わせる。そういえば、和ちゃんを上から見つめることはあまりない。
「ねえ、和ちゃん。私としゃべれなくてさみしかった?」
「まあ、それなりに」
「それなり、って何!? そこはハッキリさみしかった、って言おうよ!」
「初めてだからね、こういうことは。普段通りだったら別に口をきかなくても気にしないのだけど」
「そうだね。一緒に居るだけで楽しいもんね。でも、私は普段通りのときでも無理かもしれない。しゃべらないって決心しても一日だってもたなかった。なのに卒業して、離れ離れになって、お互いの誕生日も祝わなくなって、メールもしなくなって、それが普段通りになってしまったらどうするの? どうすればいいの?」
「待って、唯。話がよく見えない」
「まったく、和ちゃんの……バーカッ!」
「昨日はアホで今日はバカなのね私は」
「だって私が怒ってるのは誕生日を忘れられたからじゃないんだよー!」
「これからは忘れることが当たり前になる、って私が言ったからでしょ?」
「そうだよ!……ってあれ? わかってたの?」
「まあ、それなりに」
「えー!?」


―――11月27日。昨日は私の誕生日だった。
遅刻をせずに登校すると、クラスメイトの皆がおはようとおめでとうを伝えてくれた。りっちゃんたちはプレゼントも渡してくれた。憂とあずにゃんなんかは0時ピッタリにお祝いメールまで送ってくれた。
和ちゃんはその日も生徒会活動で忙しい様子だった。朝はさわちゃんと同時に入ってきたし休み時間もお昼休みも姿を見かけない。まだおめでとうも何も言われてないけれど、毎年恒例のお誕生日会があるから大丈夫だよねと長年の付き合いからくる自信に励まされて私も何も言わなかった。
けれども、さすがに “今年は生徒会の集まりがあるから遅くなりそう。時間の目星がついたら連絡するわね”と何日も前に言っていた連絡が当日の放課後になってもまだないのには不安が募るばかりだった。
「和ちゃん。お誕生日会、何時頃に来れそう?」
「え?………ああ、そういえば今日だったわね」
「忘れてたの!? ひどいよ、和ちゃん!!」
「ごめんなさい」
「ちょっと、何その深刻な感じは。まさか誕生日とお誕生日会、どっちも忘れてたんじゃないよね?」
「……これからは忘れることが当たり前になる、」
「和ちゃんのアホーーーーーーーーーーッ!」
ついに切り出してしまったとドキドキしたのもつかの間、ショックのあまり教室を飛び出して気付いたら部室の前だった。
だから、あのとき教室に残っていた皆は誰もが誕生日を忘れられたのが原因だって未だに勘違いをしたままだ―――。


「あれには続きがあるのよ。これからは忘れることが当たり前になる、かもしれない。それでも来年は絶対に忘れないし、ずっと祝うつもりだから」
「な……!? そんな大事なこと追っかけて言いに来てよ! その一言で私の悩みは全て解決したよ!!」
「生徒会の集まりがあったからね」
「メールか電話かすればいいじゃん! なんなの好きなおかずで攻めるって!?」
「こういうのは直接言わなきゃ意味がないでしょ」
「真面目かっ!」
「大真面目よ。本心だもの」
「ああ、もう……和ちゃんって……」
「何よ、苦笑いなんかしちゃって」
「もし私がここに訪ねてこなかったらどうしてたの」
「そのときはそのとき」
「和ちゃんには“卒業後”に対する厄介な感情とかないの」
「特にないわね。新生活は楽しみだし、高校生活は悔いなく過ごしたし」
「本当に無駄な抵抗をしてるだけだった……」
「無駄な抵抗って?」
「いえ、こっちの話です。なんかもうごめん、私子供で」
「それが唯の良いところじゃない」
「そうかな。いい加減イヤになったりしない?」
「今さら付き合いをやめる方が難しいわよ」
「そっか……」
和ちゃんの両手をつかんでにぎにぎし始めたところでお昼休み終了のチャイムが鳴る。
「あーーー! お弁当食べれなかった!!」
「しょうがないわよ。教室戻りましょう」
「そんなあっさり?! いいじゃん、ちょっとぐらい遅れたって~」
「ダメ。次は体育だし余計に」
「私の卵焼きが~タコさんウインナーが~イチゴが~」
「唯、早くして。鍵閉めるわよ」
「うぅ、わかったよ……今度、お誕生日ケーキ作ってね?」
「はいはい」
しっかり手を繋ぎながら教室へ戻ると、勘違いをしたままの皆とムギちゃんは安心した表情で、りっちゃんと澪ちゃんは、仲直りしたんかい!、とツッコミを入れて迎えてくれた。
私と和ちゃんはひとまず顔を見合わせてから、皆に二人でお詫びをした。
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by cyawasawa | 2013-11-27 00:01 | けいおん!! SS(8)

百合と舞-HiMEとけいおん!!とアイマスと艦これと制服女子高生と一緒に歩んで生きたいブログ。


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