沼地。

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『差』

なつきお誕生日おめでとう!!!

なつき視点の静なつSSです。

暗くないよ!








「なつき、お誕生日おめでとう! と、いうわけでプレゼントは〝うち〟どすえ」

眠りにつこうとした矢先に馴染みの声でおかしな発言が聞こえてきた。
せっかく日陰を確保したというのに相手にしたら、涼しさ、快適さ、静けさ、その全てが無駄に終わるだろう。このまま芝生に包まれながら夢の中へ突入しようと考えたが、あいつのことだから起きていることぐらい察しているに違いない。例えタオルが顔にかかっていたとしても。
「全くもって意味がわからないんだが。そもそも誕生日はまだ先だ」
だから私は抵抗のつもりで思いっきり呆れ声で返してやった。
「今年の夏休みはより一層色んなとこ動き回らはるんやろ。邪魔ならんよう先祝っとこ思て」
「そもそも、祝ってくれなくていい」
「と、いうわけでプレゼントはうちやから。うちの誕生日にはなつきをください」
なんの効果も無くタオルをゆっくりめくられると、そこには夏の陽射しにも対抗出来るほどの眩しい笑顔があった。
「あーはいはい、わかったよ。で、お前は私に何をしてくれるんだ?」
観念して起き上がる。こいつはいつもそうなんだ。まずはふざけて私の様子を窺って……
「三年目にもなると、お互いあしらい方がうまなりますなぁ」
今度は私の心中を察したかのような発言をする。
「そうだな」
「うちはその事実だけで満足どす。はい、ほんまのプレゼント」
「……ありがとう」
何がしたいんだ。と言いそうになったところをおさえて私は隣に座り込んだ静留から大人しくプレゼントを受け取った。


「―――っていうことがありましたやん。覚えたはる?」
「ああ、覚えているよ」
アイスティーにミルクを混ぜながら答えた。カラカラと氷が鳴って、ぐにゃぐにゃと色が変わっていく。こんなときでもないと関わりがない飲み物は、女性客ばかりのカフェというのも手伝ってなんだか落ち着かない。
「いつの間にか一年経ったんやね。早いどすなぁ」
「そうだな」

卒業をやめてしまおうかと手から証書筒を落下させた静留も気が付けば大学一年生、私は高校二年生になって初めての夏が訪れていた。
昨日、突然の連絡をくれた静留によって実に卒業式以来の再会となったそれは今までとは違った、いわゆる裏情報や駆け引きが存在しない普通の学生としてのお喋りが展開されるんだろうと新鮮味に対する期待はあった。しかし、何故だか現在進行形の近況ではなく過去の思い出話から始まって、久々に友人に会うとはそういうものなのか、単に静留がそういう奴なのかわからないまま慣れないアイスティーを口に運ぶ。

「……静留の遅いな。何頼んだっけ?」
「店長オススメ、緑茶オレンジジュース」
「私はそれぞれ単品だからこそ美味しいと思う」
「せやけど、店長さんのオススメやから……そやから、遅いんやろか? お茶摘むとこからやったはるんかもしれません」
「それもうオススメどころかこだわりの一品だろ」
などと、実のない会話をしていたら運ばれてきた。色合いは完全にオレンジジュースだ。
「美味しいのか?」
「ええ。クリーミーなオレンジジュースですわ」
「へえ……」
「飲んでみはる?」
「いや、いい」
元から興味は無いが、今飲んだらアイスティー味も加わってとんでもない事態になりそうだからな。
「最近、高校生活はどないな感じ?」
「以前より出席日数が増えたから迫水はうるさくないし、平和だ」
「そら安心しましたわ。鴇羽さんやらは元気にしたはるん? あ、菊川さんのことは珠洲城さんから聞いてますえ」
「舞衣と楯は今日も日暮カップルとダブルデートだな。命は相変わらず元気だし、奈緒は深優・グリーアと共にシスター職が板についてきている」
「皆さん楽しそうで何よりやね」
「お前はどうなんだ? あこがれのキャンパスライフとやらは」
「そやねぇ、毎日服用意せなあかんのが面倒ですわ」
「夢がないな」
「夢は自らつかみにいくもんや……特に大学なんて自分からどんどんいかんとあっという間に時間が過ぎてなつきへの連絡も前日になってしまう有り様」
「楽しそうで何よりじゃないか」
「ええ、楽しいどす。毎日充実してますわ。夏休みも長いしね」
「うらやましい。こっちはあと二十日ほどか」
「ほんでな、うち明日から実家帰るんよ。と、いうわけでお誕生日おめでとう」
「さっきから鞄を漁っていると思ったらまた唐突だな」

そして、もしかしたら〝これ〟が本題だったのだろうか。

「今年こそは当日に祝いたかったんやけどね。ちょうどお墓参りの時期と重なってしもて。少し早いけど堪忍な」
「いや、こちらこそ忙しいのにわざわざすまないな。ありがとう、嬉しいよ」
「ふふふ」
「なんだいきなり」
「素直にならはったなぁ思て」
「無駄な抵抗をやめただけさ」
私は受け取ったプレゼントをさっさとリュックの中へ入れた。
「そうそう、今やから言える話なんやけどね」
「なんだいきなり」
「〝プレゼントはうちやから。うちの誕生日にはなつきをください〟な。あれ、ゆうのすごい緊張しましたわ」
「全然そんな風には見えなかったぞ」
「ふふふ。そうでもないと片想いなんて出来ません。せやけど、なつきはいつも通りの呆れ声でなぁ。うちとなつきの想いの差はここまであるんかと痛感したもんどすわ」
「……確かに今だから言える話だな」
「なあ、今もし同じことゆうたら、どうなるん? うちまだなつきのこと好きなんやけど」
ボコォ!、とストローから泡が勢いよく吹き出した。
残りが少なくて助かった……じゃなくて、何を言ってるんだこいつは!? まさか本題は〝こっち〟だったのか? 久々の再会、過去話、実家に帰る、それなりの覚悟……いやいや、まさか。
そっと静留を見ると、やっぱりあの日と変わらない笑顔がそこにあって、私は所在なさげにもう何度目だろう、とにかくアイスティーを口に運んだ。
「冗談やて、冗談」
「お前のときのプレゼントはどうなるか、覚えていろよ……」
「あら、楽しみが増えましたわ。期待させてもらいます」
「ふん」
そうだった。静留はこういう奴だった。おそらくずっと、これからも。


その後、私たちは空のグラスもお構いなしに喋り続けた。
次は余裕をもって。それだけ念を押して、また会う約束をしてから別れを告げると、外はすっかり夕焼け色に染まっていた。
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by cyawasawa | 2013-08-15 00:01 | HiME SS(14)

百合と舞-HiMEとけいおん!!とアイマスと艦これと制服女子高生と一緒に歩んで生きたいブログ。


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