沼地。

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『銀河よ眠れ』

奈緒ちゃんお誕生日おめでとう!!!

あまりハッピーではない奈緒ちゃんお誕生日おめでとうSS。








———ああ、今年もやってきた。

なんの意味もない、なんの役にも立たない、年を重ねるだけの一日。
それなのに毎年0時ちょうどにあおいからのメールが届く。まあ、偽善者女やマヨネーズ女が相手よりかはマシだけど。だからって、何がおめでとうなんだか。なんにもめでたくない。素敵な一年を過ごせますように? 過ごせるわけがない。だって、あの日からずっとママは目覚めない。


携帯の電源を切った。あたしはため息をついてジュリアに寄り添う。
「これからどうしよっか」
夏が近付くと〝バカ〟が増える。今日はいつもより収穫があった。いつもならそろそろ帰る頃だ。帰ってゆっくりお風呂にでもつかりながら〝戦利品〟の使い道を考えて……でも、何故かそんな気はしなかった。決して今日という日が原因じゃない。そこまで気にするほど子供じゃないし。
「見て。あの二人組、バカそう」
ビルの屋上から見下ろした先には、いかにもちゃらい服装をした男が二人。さっきから節操無く女に声をかけては断られを繰り返している。
「夏休み前に彼女をつくっておきたいバカ大学生ってとこか」
こういう奴らは狙いやすい。こっちは歩いてさえいれば向こうから簡単にノッてくるから。金目のものはあんまり持っていないだろうけど、片隅に残った暴れ足りない気持ちが疼く。

決まりだ。

「ジュリア、いつも通りに」
背後から襲いかかる指示をしようとした瞬間、バカ大学生たちはガッツポーズをして大袈裟に喜んだかと思えば、制服を着た女二人組とファミレスに消えていった。
「……どいつもこいつもバカしかいない」
けれど、あんな奴らにも親がいて、家族がいる。例えば百歳まで生き永らえたとしても、死んだら贅沢にも悲しむんだ。
「なんでもない。行こう」
あたしの顔を不思議そうに覗くジュリアの頬をなで、背中に飛び乗る。
「どこでもいいから、しばらく飛んでよ」
ジュリアは、コンクリートの床を勢いよく蹴って空に向かった。


風が気持ちいい。
最近は暑くてたまらない日が多くなった。けれど、夜はまだ涼しくて過ごしやすい。梅雨入りになればそれもあっという間に終わるんだろうけど。傘を差した男も狙いやすいんだよね……また、こんなことばかり考えて。広がる星の景色とはずいぶん対照的だ。

昔、ママと夢見た願いごとは間違っていた。だって、空を飛ぶ今、あたし一人が叶ってる。

いつまでママとあたしはこのままなんだろう。望んだ力が手に入っても肝心の想いは叶わない。最後に誕生日を祝った記憶が思い出せない。思い出すのは怒りと憎しみばかり。嫌な出来事とクズみたいな人間ばかり。だから、あたしは力を駆使して願うことすらしなくなった。いちいち目にうつる赤い媛星が忌々しい。星に紛れて輝いても、あんたは何もしてくれないくせに。
「待って! 降りて!」
急ブレーキをかけた車のようにガクンとなった。
ジュリアは周りを確認したあと体勢を立て直し、バランス良く馴染みの場所に着地する。相変わらずデカい木。そして、相変わらず遠目からでも病院の建物がよく見える。この距離感がちょうどいい。ママとは毎日会っている。今日来たのは決して今日という日が原因じゃない。そこまで気にするほど子供じゃないし。ただ、ときどきどうしようもない現実を自覚して、少し思うところがあるだけ。

「ありがと、ジュリア。帰ろう」
急激に眠気がやってきて、それは久々の感覚だった。再び颯爽と駆ける中でジュリアの長い手足を生かしてもたれかかる。

明日になったら、全てが元通りになればいいのに。
明日になったら、全てが終わればいいのに。
明日になったら………

夜風の心地よい肌寒さを感じながら、あたしは素直に瞼を閉じた。
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by cyawasawa | 2013-06-13 00:00 | HiME SS(14)

百合と舞-HiMEとけいおん!!とアイマスと艦これと制服女子高生と一緒に歩んで生きたいブログ。


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