沼地。

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『12月25日、帰り道。』

和ちゃんお誕生日おめでとう!!!!!


※おめでとうSSは今週中に追記致します※
12/30 23:17追記! 和ちゃん視点の唯和SS!








「はあ~楽しかったねぇ……って、外さむっ!!」

改札を出た瞬間、唯は上着のポケットに両手を突っ込んだ。
手袋をしていてもそうなるのはいかに寒がりなのかを示していて、それでも私はしばらくしたら暑がりでもある行動を示すはず、と、予測しながら隣に並ぶ。

「さすがのムギだったわ」
「うん! あんなにおっきいツリーが自分の部屋に置けるなんてすごいよね。皆で好きなように飾り付けしたり面白かったなあ。ご飯もケーキもおいしかったし……うへへ」
「そうね」

まさかムギが家に招待してくれるだなんて全員が嬉しくなる前に驚いたものだった。
今まで集まる場所といえば平沢家と決まっていたし、未開の地のような存在だった琴吹家に訪れるのは初めての出来事で、言わばその〝最後の気遣い〟は卒業が着々と近付いている象徴でもあった。誰も口には出さなかったけれど、期待の中に少しの寂しさが混じったクリスマスパーティーはいつもと違って不思議な一体感で満たされていた。

唯の言う通り楽しかったのは確かだ。
その証拠に終電ギリギリまで粘った結果が今の私たちで、行きより随分と冷え込んだ夜空の下をとぼとぼと歩くはめになっている。

「これで私は皆の家を制覇した! 和ちゃんちまで行ったのは私だけだもんね~、へっへっへ、へ、ぶへっくしょいっ!」
「また盛大なくしゃみね」
「うぅ油断した……思った以上に寒かった」
険しい表情で鼻をすする唯。
「やっぱり澪たちと一緒に車で送ってもらうべきだったんじゃないかしら。なんで頑なに断ったのよ」
「いやあ、だってー……車だとあっさり着いちゃうし別々になっちゃうし。そうなると和ちゃんの誕生日を祝えなくなるじゃん」
「え、そんなことで?」
「そんなことじゃないよ。0時ちょっきりに直接おめでとうを言いたい気持ち、分かんないかなあ」
「明日も朝から冬期講習でしょ。風邪でも引いたら唯の人生終わるわよ」
「一回休んだだけで?! さすがにそれはないよ、和ちゃん!」
「どうかしら。受験生という立場の重みを甘く見ると痛い目見るかもよ」
「ねえ、和ちゃん。私が和ちゃんのサンタさんになる、って宣言した日。覚えてくれてる?」
「また唐突ね……忘れようにも衝撃が強くて、ずっと片隅に残ってるわよ」
「私も衝撃だったの。真鍋家では和ちゃんの誕生日とクリスマスを同時にお祝いされちゃうことが」
「兄弟が多いところは普通じゃないかしら」
「そこだよ。和ちゃんは昔から自分のことはほったらかし。私だったら絶対やだね」
「そんなにケーキとプレゼントが欲しいの?」
「違うよ! 自分の生まれた日なんて特別な出来事を同じにされるのが許せないんだよ! クリスマスも素敵だけどさっ!」
「別に同じにされたからって軽んじられているわけではないし」
「かろん……? とにかく、あの頃の私はもしかして和ちゃんはおじさんとおばさんから愛されていないんじゃと本気で悩んだものだよ。あ、これ今だから言える話」
「大袈裟ねぇ。一歩間違わなくても笑い話よ、それ」
「ふふふ。だから私は今年も和ちゃんのお誕生日会を開催するのだ。明日、うちに18時だからね? 遅れちゃダメだよ!」
「はいはい」

そうして律儀にも幼稚園から続けられてきたお誕生日会は多分、今年で最後だろう。
唯と憂と私だけだったクリスマス会も今日のように形を変え、共通の友人では収まりきらない新たな関係もお互い作り上げてきた。卒業して離れた場所で大学生活を送るとなれば、いつまでも維持するのは難しくなるのが自然なことだ。

「来年も開催するからね」
「それは無理よ」
「即答?! ヒドいよ、和ちゃん!」
「たまたまそのことを考えていたから」
「だったら余計ヒドいよ! 何勝手に一人で結論出してんの、さっ」
口をとがらせながらの軽いタックルをもらった。
「ちょうど冬休みなんだし、私の家まで会いに来てよ。無理なら私から会いに行くよ」
「そこまでしなくてもいいと思うのよ。例えば唯の前に私より優先すべき相手が現れたとしたら、そっちを選ぶのが当然でしょう?」

「じゃあ私、和ちゃんの恋人になる」

ふいに視界から消えた姿を追うと、唯は歩幅一歩分離れた背後で立ち止まっていた。
赤らんだ頬や鼻は決して寒さのせいじゃないと言わんばかりの表情でこちらを見据え、ああ真剣なんだな、と私は過去の経験を生かし、対処する。
「恋人になれば優先順位は一番に変わるって?」
「そうだよ。本気だからね、私」
「じゃあ恋人らしく遠距離恋愛を乗り越えてもらわないと」
「う。そ、そうきたか………分かったよ、我慢するよ。だからなってくれる?」
「それこそ無理よ」
「ここまできて即答?! ヒド過ぎるよ、和ちゃん!!」
「だって、ここまできたらわざわざそんな肩書きはいらないぐらいのとこまできてるでしょ」
「おお、確かに。つまりこのままいけば和ちゃんのお嫁さんになる宣言もいつかは叶うってわけだね」
ぴょん、とジャンプして再び隣にやってきた唯は何故か得意げな笑みを浮かべていた。
「幼稚園の頃だっけ。よく覚えてたわね」
「なりたいシリーズは全部覚えてるよ! えっとー、お嫁さんとお姉ちゃんとコックさんとヒーローとー……って、今何時!? 0時過ぎてない?!」
唯はポケットから出された両手で数えられていた行為を慌てて中断し、腕時計を確認したかと思えば、良かったー、の一言と共に安堵した顔で白いため息をついた。短時間で喜怒哀楽全ての感情を見た気がする。たまに突拍子もないことを言うくせに相変わらずの分かりやすい目まぐるしさに私は込み上げてきた笑いをグッとこらえて歩き出す。
「あと6分だよ、和ちゃん。ドキドキするね!」
「……そうね」
「はー、なんか暑くなってきちゃった。手袋ぬいじゃおーっと」

その後は、突然笑い出した私に原因を追及する唯とのやり取りが祟って結局0時ちょっきりに祝うことは実行されなかったのだけれど、この日の帰り道はどんなプレゼントよりも印象に残るものに違いないと、左手に滞在する唯の温度を感じながら不覚にも確信した。
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by cyawasawa | 2012-12-26 00:01 | けいおん!! SS(8)

百合と舞-HiMEとけいおん!!とアイマスと艦これと制服女子高生と一緒に歩んで生きたいブログ。


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